松林俊幸
朝日焼
PROFILE
PROFILE
松林俊幸
1983年3月3日 うお座
趣味:お茶と工芸に触れる旅。沖縄では紅茶農家さんを訪ねたり、現地の漆や焼物に触れたりして刺激的でした。台湾など海外もお茶+工芸目的で旅行しています。台湾は好みのアンティークの器を探すのが楽しく、また別日に訪ねた茶農家さんの烏龍茶はとてもおいしく驚きました。
長く続いていること:これもお茶。お茶は、抹茶、煎茶、中国茶、紅茶、すべて好きです。茶農家を訪ねたり、家で中国茶を淹れたり、最近は7年ぶりに茶道のお稽古を復活し、平点前から学び直しています。朝日焼も含め茶器を見るのも好きです。
茶文化の中心地である京都・宇治にある窯元「朝日焼」は、千利休や小堀遠州などの茶人が活躍した約400年前に開窯しました。初代陶作が小堀遠州より「朝日」の印を与えられたことから「遠州七窯」のひとつとされ、現代まで伝えられています。宇治茶と茶の湯の発展に伴い朝日焼も発展し、多くの茶道具が大名や公家、茶人に愛用されていきました。朝日焼の大きな特徴である「登窯」での作陶は伝承され、煙の出ない登窯も導入しています。
2017年には宇治川のほとりに「朝日焼 shop & gallery」をオープン。情緒あふれる空間で、朝日焼の魅力を感じられるスペースになっています。また、朝日焼と宇治茶を楽しむイベントや併設の茶室での茶会開催など、積極的に朝日焼、そして宇治の茶文化を伝えています。
茶と器への思い
物心ついたときから、工房や近所のお茶屋さんのおじさんが「お茶飲んでいき」って、よくお茶を淹れてくれていたんです。私のお茶好きのルーツはそこからです。
朝日焼は宇治茶とともに約400年発展してきました。大事にしている朝日焼の土は、何万年前に琵琶湖・宇治川から流れてきた原土を採掘したもの。そしてもう1つ大事な登窯。窯元では現在でも登窯での焼成を継続しています。宇治の土と薪を使う登窯での焼成が合わさると、朝日のようなオレンジやピンクの色をまとい独特の表情を見せてくれます。
朝日焼の魅力を伝える直営店「朝日焼 shop & gallery」は特別な場所です。1度だけでなく、親しい人を訪れるように、陶器を見たいという思いはもちろん、店主である私やお店のスタッフに何度も会いたいと思ってもらえることが理想。朝日焼は何度もじっくり見ていただいてこそ発見の多い焼物だからです。
伝えていくべき不可逆なもの
京都は文化のチャンネルが多い町です。例えば京都の着物には染めや織りがあり、多くの職人が情熱を持って携わっています。祭には子どもたちも参加し誇りを持っています。地域の人々と情熱が文化を作ると感じますね。文化は失うと元には戻せないので、無くなることには危機感を持ちます。文化は常に現代性を持ちながら「必要であり続ける努力」をしないといけない。それには情熱がとても大切です。
朝日焼の役割は、宇治の窯元として京都の工芸や茶文化を現代に伝えていくこと。そのために自分たちで背景を知り、積極的に発信することが大切だと考えます。その積み重ねが文化の継続に繋がると考えています。
今の京都は観光地に人が密集し過ぎているように感じます。ゆっくりコミュニケーションを取れる空間でないと文化は育たないと思います。直営店では距離感を大切にしています。
先人の築いた土台の上に積み上げていく
私どものような小さな工房は、窯元の職人や、広報や販売スタッフがひとつのチームになり、ものづくりをすることが大切だと思っています。ニーズに合わせた計画的な生産をするというよりは、工房では一般的には効率的ではないトライアンドエラーを常に繰り返しています。自分たちの生産スタイルを信じて、私たちは工場のような分業を主とした生産体制は持ちません。ですので、感性や美意識は常に新しくを持ちたいと思っておりますが、生産面でいうと古典的なのんびりしたペースと思われているのではないかと。新商品は年に15~20アイテムほど。新商品のための企画会議でも、ほとんどがまったく新しいものからアイディアを生み出すより、過去の作品の中からヒントを得て作ることも少なくありません。私たちのものづくりは、先祖の積み上げてきた土台の上に積み上げていくような感覚を常に持っています。
人の根底に共通する純粋美
「純粋」が好きです。あれこれと考える性格ですが、判断に悩んだときは「純粋であるか」を基準にしています。また美しさにおいても「純粋」を判断基準にしています。この仕事をしている理由を突き詰めると「純粋で美しいものを見たいから」という答えに行き尽きます。
私は陶器に出会うとひっくり返して高台の底を見ます。器づくりのオヘソであり、陶器はそこに隠しきれない美しさが宿るように思います。陶器の高台の景色を見ることに飽きることがありません。陶器の美しさの基準は人によって様々に違いますが、その高台の箇所には共通した純粋性が見えるからです。
いにしえの人々って、朝日や夕日を毎日飽きるほど見ていたと思うんです。彼らも私たちと同じように、何度見ても、朝日や夕日は美しいと感じて飽きることはなかったと思うんですよね。朝日・夕陽と陶器の高台を美しいと思う感覚が、私は最近同じになってきています。
MOVIE
INTERVIEW
- 陶器には樹木の灰釉のものや絵画的に絵付けするものなど、たくさんの種類がありますが、どう楽しめばいいのでしょうか。
- 茶道の陶器は、誰が作ったのか、誰が所有していたかなどが価値基準になることが多いのですが、あまり囚われ過ぎずに、そのものの美しさや芸術性を楽しんでください。日本では、箸または直接器の口に触れることが多いので人と器との距離が近い。西洋は、ナイフとフォークを使うため、人と器の距離は遠くなります。それゆえ西洋はわかりやすく絵画的な陶器が好まれます。日本では絵付けの器はもちろんありますが、形状や質感などを意識し制作します。どちらが良いということではなく、文化の違いは影響しますので、そういうことを少し知ったうえで陶器を見ると、内包した美しさを発見し、楽しみが増えていきます。
- 若手の職人の減少や効率性を重んじて手作りを避けるといった傾向が強まっている世のなかですが、手作りを守り続けていきたいと思っていますか。
- 兄(十六世当主)がよく言うのですが、伝統はマラソンのようにバトンを繋いでいくものだと。バトンを途切れさせたらマラソンは終わってしまうんですね。当窯は今、先代からの職人と昨年から採用した若手がいて、中間層の立場の職人が少ない状態です。危機感は常に持っています。バトンを落とさないように。
ただコロナ禍を経て、効率性だけじゃなく精神的な豊かさを価値基準にする世の中になったように感じます。私たちのような伝統と云われるものづくりが、前よりは伝えやすくなってきた。手作りが売りではなく、必然性を持ちながら手作りの制作過程を大事にしたいです。
- 業界の傾向や世の中の動向で、今苦しんでいることはありますか?
- お茶をペットボトルで飲む人が増えて、急須を使う人が減っているのは、茶器製造という業種の立場ではしんどいなと感じています。もはや「お茶は急須で淹れるのが当然」という方向での発信は難しいので、今はいかにこれからの世代に「急須で淹れるお茶は楽しいよ」とうことを、古典的でなく、新しい感覚で発信できるかを常に考えています。
また、茶道の茶道具としての国内マーケットは縮小傾向です。今はグローバルに発信できるので、世界にお茶と日本の陶芸の素晴らしさを伝えていきたいと思っています。野外には不向きな陶器ですが、お茶を野外で楽しむアウトドアセットの企画も真剣に進めています。
ABOUT THIS DIALOGUE
グループ料金 | ¥ 200,000 |
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参加人数 | 1~4名 |
実施時間 | 10:00~13:00 or 14:00~17:00 |
キャンセル規約 | 開催日の7日前以降のキャンセル料は100% |
お支払い方法 | クレジットカードのみ |
応募条件 | 18歳以上 (保護者同伴の場合、12歳以上可) |
予約期限 | 対談日の7日前まで |
当日の流れ | 1. ホテルまでお出迎え 2. 現地到着 3. ブリーフィング(約30分~約1時間) 4. ダイアローグ(約1時間) 5. ホテルまでお送り |